ベスト・オブ・イエメン|猿田彦珈琲も審査に参加しています
豆知識
2026.09.04

こんにちは。
今回は先日実施した「ベスト・オブ・イエメン 2026」の審査と、イエメンのコーヒーについてお話しします。
【目次】
- ベスト・オブ・イエメンとは
- コーヒー産地としてのイエメン
- ベスト・オブ・イエメンと猿田彦珈琲
- ベスト・オブ・イエメンの審査について
- まとめ
ベスト・オブ・イエメンとは
「ベスト・オブ・イエメン(Best of Yemen)」は、「カップ・オブ・エクセレンス(Cup of Excellence)」を主催するACE(エース:Alliance for Coffee Excellence)と、イエメンのスペシャルティコーヒーを扱う輸出会社Qima Coffee(キマ・コーヒー)が共同で、2018年から行っている品評会&オークションプログラムです。
Qima Coffeeは単に生豆の輸出にとどまらず、イエメンにおいて持続可能なスペシャルティコーヒー生産に深く関わり、資金や技術提供、品種の研究まで行っています。

コーヒー産地としてのイエメン
中東アラビア半島に位置するイエメンは、コーヒー産地の中でも特別な場所の一つです。

雲霧に包まれるイエメンの山岳地帯。標高の高い斜面に沿って、コーヒー畑が段々に広がっている。
- コーヒー文化の始まりの地
現在のコーヒーに一番近い飲み物は、アラビア半島のイスラム教の文化の中から誕生したと考えられています。
17世紀から18世紀にかけてエチオピアで利用されていたコーヒーの木が移植され、「コーヒーという飲み物を作るためのコーヒーの木の畑」が世界で最初に作られた国で、400年以上の歴史がある畑もあります。コーヒーを輸出していた港の名前が「モカ」だったことから、この名前は現代でもコーヒーの世界に残っています。 - アラビカ栽培種の故郷
現在世界中で栽培されているアラビカ栽培種のコーヒーですが、アフリカや中南米の植民地でコーヒー栽培を始めるための苗木が、イエメンから持ち出されていたことにより、ほとんどのアラビカ種はイエメンをルーツに持ちます。
イエメンで栽培されているコーヒーの中には、代表的な栽培品種(ブルボン、ティピカ、SL、ケント)の原種が今でも存在しています。 - 特殊なテロワールと品種
もともとエチオピアの冷涼で湿度の高い雲霧林に生息する日陰樹だったコーヒーですが、イエメンの山岳地帯は冷涼で乾燥した気候の土地です。この気候の違いによって移植されたコーヒーは長い時間をかけて形質を変化させ、イエメン独自の品種群を作ることになりました。
Qima Coffeeは遺伝子調査によって明らかになったこの品種群を「イエメニア」と名づけました。イエメニアは乾燥耐性があるため、気候変動に対応した品種開発に役立つことが期待されています。
イエメンのコーヒーは基本的にナチュラルプロセスで生産処理され、熟した果実の香りと、他の産地のコーヒーだとあまり感じられない、お香やスパイスの香りが特徴です。 - 特殊な政治事情
イエメンは2015年から内戦状態にあります。国連はこれを「世界最悪の人道危機」と呼んでいて、飢餓と混乱状態が10年以上継続しています。
そのため外国人が出入りすることは非常に難しいのですが、Qima Coffeeは、この危機によってコーヒー産業が失われることを危惧したファリス氏が立ち上げた会社です。同氏はもともとエネルギー開発を志していた、イエメン出身の人物です。
Qima Coffeeは財団を立ち上げており、コーヒー事業の収益の10%をこの財団を通じてイエメンの教育や農業プロジェクトに寄付しています。

標高の高い乾燥した山岳地帯に設置された、コーヒーチェリーの乾燥ベッド。イエメンのコーヒーは基本的にこのナチュラルプロセスで生産処理される。
ベスト・オブ・イエメンと猿田彦珈琲
猿田彦珈琲は2019年のベスト・オブ・イエメン優勝ロットを落札した実績があります。
2019年は遺伝子研究の結果発見された新品種群「イエメニア」の名前が初めてつけられた品評会で、優勝ロットもイエメニアのロットでした。
以降、猿田彦珈琲はベスト・オブ・イエメンの審査にも関わらせていただいています。

猿田彦珈琲での審査の様子。カッピングテーブルを前に、それぞれのロットを丁寧に評価していく。
ベスト・オブ・イエメンの審査について
イエメンは上述の政治事情から、カップ・オブ・エクセレンスのように審査員を招待して開催することができません。
そのためQima Coffeeが選定した世界中の会社に生豆サンプルを送付し、スケジュールと期日を決めて評価・提出し、集計する手順を取っています。
猿田彦珈琲では7月30日に審査を実施し、フォーマットに沿って送信いたしました。

Best of Yemenの審査用豆サンプル。1袋ごとにサンプル番号が記載されている。
まとめ
素晴らしいコーヒーたちの審査に関わらせていただいたことに感謝しつつ、現在は9/10に開催予定のオークションに向けて落札したいコーヒーの選定を進めているところです。
うまくいけば皆さんにご紹介できるかもしれません、楽しみにしていてください。
Text:村澤 智之(猿田彦珈琲)



