ウォッシュトプロセスとは|コーヒーの生産処理について ①
豆知識
2026.03.24

私たちが「コーヒー豆」と呼んでいるものは、アカネ科の植物“コーヒーノキ”の果実(コーヒーチェリー)の中にある種子(胚乳)を乾燥させた「生豆(なままめ)」を焙煎したものです。
コーヒー生産者の主な仕事は、コーヒーノキを育てて果実を収穫し、生豆の状態に加工すること。この生豆へ加工するためのやり方を「生産処理」や「プロセス」と呼びます。
伝統的な生産処理には主に3種類の方法がありますが、今回はその中の1つ「ウォッシュトプロセス(水洗式)」について解説したいと思います。
【目次】
- 生産処理のその前に
- ウォッシュトプロセスの工程
1 チェリーの選別
2 果皮・果肉の除去
3 水に浸ける
4 乾燥 - ウォッシュトプロセスの味わい
- まとめ
生産処理のその前に
コーヒーの品質(おいしさ)は、生豆の品質に大きく影響されます。
高品質な生豆のためにまず必要なものは、高品質なコーヒーチェリー。
小規模生産者の多くは期間労働者(ピッカー)を雇って人の手による収穫を行っていますが、このピッカーたちが完熟したチェリーを選んで収穫してくれているかどうかがまず重要です。
後述する生産処理の過程で品質の低いコーヒーチェリーは取り除かれていくため、高品質なコーヒーを作る生産者は、ここを大事にして農園を運営している印象があります。

手摘みされた、完熟のコーヒーチェリー
ウォッシュトプロセスの工程
手順を簡単に説明すると、「チェリーの選別 → 果皮・果肉の除去 → 水に浸ける → 乾燥」という手順です。
1 チェリーの選別
腕のいいピッカーが収穫していても、一定数未熟なコーヒーチェリーが混ざりますし、一見完熟していても実は完熟していないものや、完熟していても中身に問題があるものもあります。収穫したチェリーには「未熟なもの・未完熟なもの・完熟したもの・熟しすぎたもの」が混ざっていることが通常です。

左から過完熟~未熟。色味で異なるチェリーの熟度
生産処理をする前にある程度選別することで、効率よく品質の高いコーヒーを作る仕組みが作られていて、ウォッシュトプロセスの場合は水を使った比重選別がとられることが多いです。未熟・未完熟・完熟したものは比重が高く(重く、水に沈む)、熟しすぎたものは比重が低い(軽く、水に浮く)ため、一旦水に入れて浮いたものを取り除くことで、熟しすぎたものが含まれない状態で果肉除去を始めます。

水を使った比重選別の工程
2 果皮・果肉の除去
コーヒーチェリーの構造は、内側から「胚乳 → パーチメント → 粘液質/果肉 → 果皮」という構造なので、まずは周りのものを取り除くことから始まります。使うのは「パルパー」と呼ばれる専用の機械で、電気で動かすものもあれば手動で動かすものもあります。

果皮と果肉を取り除くための機械「パルパー」
果肉除去の段階で、未完熟なものを除去します。どうするかというと、パルパーの圧力を調整し、柔らかい完熟したコーヒーチェリーのみ果肉除去できるようにして、未熟・未完熟なコーヒーチェリーを取り除くようにしているのです。こうすることで高品質ロットを分けて管理しています。

圧力調整によって弾かれた、未熟・未完熟なチェリー
3 水に浸ける
果肉除去したコーヒーチェリーは「粘液質の付着したパーチメントつき胚乳」の状態です。これを発酵槽に送り、水を入れます。
粘液質は要するに糖分であるため、水に浸けることで周囲の酵母による自然発酵が起き、一定時間おくことで分解されます。コーヒーの生産処理で起きる発酵は、お酒と同様に糖分が分解されてアルコールが発生する発酵です。
このとき、発酵槽が清潔であること、またきれいな水であることが品質に影響するため、ここが管理できているかどうかはとても大事です。粘液質が分解されたことを確認できたら、水路で洗い流しつつ乾燥場に送ります。
果肉が剥かれ、「パーチメント」と呼ばれる内果皮に包まれた状態

発酵槽へ移し、表面の粘液質を分解・除去する
4 乾燥
広げて乾燥させます。乾燥工程もコーヒーの品質に大きく影響を与えます。基本的には薄く広げて均一かつ高すぎない温度で、適切な乾燥率を保つことが重要です。
伝統的なレンガやコンクリートで作られた乾燥場(パティオ)もあれば、乾燥棚(アフリカンベッド)もあれば、アフリカンベッドをビニールハウス内において直射日光や風通しをコントロールして乾燥させているところもあります。生産処理場が置かれている環境や規模、経済状況によってさまざまなやり方が採用されています。

コンクリートを敷き詰めた広大な乾燥場(パティオ)

通気性に優れた乾燥棚(アフリカンベッド)での乾燥風景
このような手順がとられているのがウォッシュトプロセスです。
最初にチェリーの選別の話をしましたが、高品質ロットを作る場合、発酵工程や乾燥工程でもさらに細かい選別が徹底されます。

乾燥を終え、クリーンな個性が引き出された生豆(なままめ)
ウォッシュトプロセスの味わい
ウォッシュトプロセスで作られたコーヒーは、おおむねすっきりとしたフルーティーな印象のものが多いです。
品種やテロワール(農園ごとの微気候)による味が分かりやすく、素直に感じられるイメージです。
産地ごとの味比べをしたい場合、ウォッシュトプロセスのコーヒー同士で比べると違いが分かりやすいですね。
まとめ
このように、スペシャルティコーヒーの生産処理における品質管理は、品質の良くないものを取り除きながら、品質の良いものだけ残して進められています。
猿田彦珈琲で販売するシングルオリジンの商品名には、基本的に生産処理の名称を入れているので、コーヒーを選ぶときにぜひ参考にしてみてください。
Text:村澤 智之(猿田彦珈琲)
【シリーズ:コーヒーの生産処理について】
- ウォッシュトプロセスとは(本記事)
- ナチュラルプロセスとは(近日公開)
- アナエロビックとは(近日公開)
- ハニープロセスとは(近日公開)



